法人設立の資本金はいくらがいい?決め方と税金への影響を解説
- 株式会社は資本金1円から設立できる(会社法に最低資本金の定めはない)。
- 資本金1,000万円未満なら、原則として設立1期目の消費税が免税になる。
- 法人住民税の均等割は資本金等の額で変わり、1,000万円以下なら東京23区で年7万円。
- 建設業や人材派遣など、許認可で資本金(自己資本)要件がある業種は要件額を満たす必要がある。
- 資本金は後から変更できるが、増資・減資には登記費用や税金がかかる。
資本金 いくら がいい 法人設立の結論

特別な事情がなければ、資本金は1,000万円未満で、かつ初期費用と運転資金を賄える額にするのが私の基本方針です。
なぜ1,000万円未満かというと、消費税の免税と均等割の安さという、現金で効く2つのメリットがあるからです。
資本金1,000万円未満で設立すると、原則として設立1期目の消費税の納税義務が免除されます。これは国税庁の案内で確認できます。
私が年間50件以上の設立・申告を見てきた感覚だと、個人事業からの法人成りなら100万〜300万円あたりに落ち着くケースが多いです。手元資金が薄いなら無理に積まなくていい、というのが正直なところ。
資本金とは、事業を行うための元手となる資金
資本金とは、株主(発起人)が会社に出資した、事業を始めるための元手となるお金です。

会社設立時に発起人が払い込んだ出資金が、そのまま資本金として登記されます。発起設立では、設立時発行株式の全部を発起人が引き受けて払い込みます。
ここで誤解しやすいのが「資本金=使ってはいけないお金」という思い込み。違います。資本金は会社の運転資金として普通に使えます。設立後に役員報酬や仕入れ、家賃に充てて構いません。
なお、払い込んだ全額を資本金にせず、一部を資本準備金に回すこともできます。設立段階ではあまり使わない手ですが、後の財務調整の幅を持たせたいときに知っておくと役立ちます。
資本金は1円でもいい?金額が低い場合のリスク
資本金1円でも法律上は設立できますが、信用と運営の両面で現実的におすすめしません。
会社法には最低資本金の定めがないため、株式会社・合同会社とも1円から設立できます。これは事実です。
ただ、資本金は登記簿に記載され、取引先や金融機関が必ず見る数字です。資本金1円の会社と100万円の会社、初対面でどちらと取引したいか。答えは明らかでしょう。
もうひとつ実務的な問題があります。資本金が少なすぎると、設立直後の家賃・仕入れ・登記費用を払った時点で口座が底をつく。私は実際、資本金が薄くて運転資金ショートに陥った相談を何件か受けました。
資本金を決める際に確認しておくこと

資本金を決める前に、運転資金・許認可・融資・税金・取引先の5つを必ず確認してください。
どれか1つでも抜けると、設立後に「資本金を変えたい」と増資や減資が必要になり、余計な費用がかかります。
- 初期費用と運転資金を計算し、それを下回らない額にする。
- 許認可業種なら、その許可に必要な資本金(自己資本)要件を満たす。
- 融資を受けるなら、自己資金の準備状況として見られることを意識する。
- 消費税の免税ライン1,000万円未満、均等割の区分を踏まえる。
- 取引先や金融機関に見られる信用の目安として妥当な額にする。
この順番で詰めると、自分の事業に合った金額が自然と1つに絞れてきます。次の章から1つずつ掘ります。
初期費用と運転資金を計算する
資本金の下限は「設立後に黒字化するまで会社を回せる現金」で決めるのが鉄則です。

具体的には、設立時にかかる初期費用と、最低3〜6か月分の運転資金を足した額を目安にします。
| 項目 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 設立登記費用 | 登録免許税ほか設立にかかる費用 | 初期費用 |
| 敷金・保証金 | 事務所・店舗の契約時費用 | 初期費用 |
| 備品・設備 | PC・什器・工具など | 初期費用 |
| 家賃 | 月額×3〜6か月分 | 運転資金 |
| 仕入れ・外注費 | 売上が立つまでのつなぎ分 | 運転資金 |
| 役員報酬・人件費 | 当面の生活費を含む | 運転資金 |
株式会社の設立登記には登録免許税がかかり、資本金×0.7%、ただし最低15万円です。資本金を決めると登記費用も連動して動くので、この点は先に押さえておきましょう。
私自身が合同会社を作ったときも、まず半年分の運転資金から逆算しました。売上が読めない時期こそ、手元現金が精神安定剤になります。
許認可の要件を確認する
許認可が必要な業種では、資本金(自己資本)の下限が法律で決まっているため、まずそれを満たす額が必須です。
代表的なのが建設業と労働者派遣業です。資本金を決める前に、自分の業種に資本要件があるかを必ず調べてください。
| 業種 | 財産的基礎の要件 |
|---|---|
| 建設業(一般建設業) | 自己資本500万円以上、またはこれに準ずる財産的基礎 |
| 労働者派遣事業 | 資産から負債を引いた額が2,000万円以上 ほか |
派遣業の2,000万円という基準を知らずに少額で設立し、後から増資する羽目になったケースを見たことがあります。許認可業種は、設立前に要件確認が最優先です。
融資額の要件を確認する

創業融資を狙うなら、資本金(自己資金)の準備状況が審査で重視されることを前提に金額を決めます。
日本政策金融公庫の創業融資では、創業計画書で自己資金の準備状況が確認項目になっています。
資本金が極端に少ないと、「自己資金をほとんど用意せずに借りようとしている」と見られかねません。借入を見込んでいるなら、資本金は信用づくりの一部だと考えたほうがいい。
ここは私の立場をはっきり書きます。融資前提なら資本金1円は避ける。少なくとも数十万〜100万円台は自己資金として積んでおいたほうが話が通りやすいです。
税金のことを考慮する
資本金1,000万円未満なら消費税が原則免税、住民税の均等割も安くなるため、税金面では1,000万円未満が圧倒的に有利です。

まず消費税。資本金1,000万円未満で設立すると、原則として設立1期目の納税義務が免除されます。前述の国税庁の案内のとおりです。
ただし例外があります。特定期間(おおむね設立後の一定期間)の課税売上高または給与支払額が1,000万円を超えると、2期目から納税義務が生じることがあります。
次に法人住民税の均等割。これは資本金等の額で区分され、東京23区では資本金等1,000万円以下かつ従業者50人以下で年7万円、1,000万円超1億円以下かつ従業者50人以下で年18万円です。
| 資本金等の額 | 消費税(1期目) | 住民税 均等割 | 法人税の軽減税率 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円未満 | 原則 免税 | 年7万円 | 所得800万円以下は15%(要件あり) |
| 1,000万円〜1億円以下 | 課税 | 年18万円 | 所得800万円以下は15%(要件あり) |
| 1億円超 | 課税 | 区分上昇 | 軽減税率の対象外 |
法人税も無視できません。資本金1億円以下などの要件を満たす中小法人は、年800万円以下の所得に軽減税率15%が使えます。資本金1億円超になると、この軽減税率の対象から外れます。
取引先のことを考慮する
資本金は登記簿に載る公開情報なので、取引先や金融機関が会社の信用度を測る最初の数字になります。
統計を見ても、日本の会社の多くは小さな資本金で動いています。経済センサスでは、資本金3,000万円未満の企業が大半を占めます。
つまり、いきなり高額な資本金を積む必要はありません。ただ、相手が法人で、与信や口座開設の審査がある取引だと、1円や数万円では弱いと見られることがあります。
私の感覚では、対外的な印象を最低限保ちたいなら100万円が1つのラインです。ここは数字の根拠というより、現場でやり取りしてきた実感です。
資本金の払込方法

資本金は、発起人個人の銀行口座に出資金を振り込み、その通帳の記録を払込証明として使うのが一般的な流れです。
会社設立前は法人口座を作れないため、発起人の個人口座に払い込みます。発起設立では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受けて払い込む、と会社法で定められています(前述のe-Gov参照)。
- 定款を作成・認証する(株式会社の場合)。
- 発起人の個人口座に、決めた資本金額を振り込む。
- 通帳の該当ページの写しなどで払込みを証明する書類を用意する。
- 払込証明書を添えて設立登記を申請する。
ここでありがちなミスが、振込ではなく「現金で入金」してしまうこと。振込人の名前が記録に残る形にしておくと、払込みの証明がスムーズです。
資本金の金額を変更するには税金がかかる
資本金は設立後も増資・減資で変更できますが、いずれも登記が必要で費用がかかるため、最初に適切な額を決めるのが得策です。

増資の場面では、代表が会社にお金を貸し付ける(役員借入金)形で資金を入れ、必要に応じて資本に振り替えるのが実務上よく取られる方法です。借入なら登記不要で、機動的に資金を入れられます。
減資は、株主へお金を払い戻すか、会社内で別の項目(資本準備金など)へ振り替える形で行います。減資すると均等割の区分が下がるなど税負担に影響することもあり、安易にやるものではありません。
正直に言うと、設立段階で迷う人ほど、後から「増やしておけばよかった」より「変えずに済む額にしておけばよかった」と後悔しがちです。最初に1,000万円未満で、運転資金を満たす額に決めてしまうのが楽です。
よくある質問
よくある質問
最後に一言。資本金は「いくら積むか」より「自分の事業をいくらで回せるか」を起点に決めると、ぶれません。許認可と融資の要件だけは先に確認して、あとは1,000万円未満の範囲で運転資金から逆算してください。
